Mr.D 期限ばかりを気にするマネージャー

唐突に「Mr.D」と書きましたが、これはQCD(品質・コスト・納期)のDのことを指しています。なぜこの用語を使ったかというと、Dばかりを管理するプロジェクト管理者が、プロジェクトメンバーを疲弊させる恐れがあるからです。私は、このようなプロジェクト管理者を密かに「Mr.D」と呼んでいます。

ERP導入プロジェクトでは、プロジェクト管理者は、プロジェクト管理の経験だけでなく、お客様の業界やERPパッケージの知識も持ち合わせていることが望ましいでしょう。しかし、業界知識やERPパッケージの習得は容易ではありません。そのため、Q(品質)に目が行き届かず、D(納期)にばかり意識が向いてしまうことがあるのです。また、準委任契約の場合、D(納期)によってC(コスト)が決まるため、Q(品質)に対する意識が薄れるのです。

Mr.Dは、納期遅延が発生すると、「なぜ遅延したのか?」、「リカバリーをどうするのか?」そして、「再発防止策を講じよ」とこの3点セットを指摘します。遅延理由やどうすべきだったかの記録は今後のために役立ちますが、現在進行中のプロジェクトを更に遅延させるような指摘は避けるべきです。むしろ、遅延が発生する前に気づいて修正することが大切です。それにも関わらずこれらの指摘に応えさせることは、遅延の二次災害を引き起こすことでしょう。期限を強く意識させることで、メンバーが自分の意見を言いにくくなることもあります。プロジェクトの管理においては、バッドニュースを最初に伝えることが原則ですが、管理が厳しすぎると、メンバーが疲弊する可能性があります。このようなことを防ぐためには、プロジェクト管理者がメンバーと共に、「過去を振り返らず、未来に向かってどうすれば良いか」を話し合うことが必要です。遅延を引き起こしたメンバーが、自分の意見を上司に伝えることができ、遅延を許されることで、プロジェクトは健全に進むことができるのです。何事も楽しむことが、成功への最短距離であると言えます。